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地域に寄り添い、根付いていく。「エネルギー事業を軸に安心安全な生活を支える」明石吉田屋産業株式会社・代表インタビュー前編

静岡県西部地域・愛知県東部にてエネルギー供給事業を担う明石吉田屋産業株式会社が、アグリテックにより農家を支援する株式会社Happy Qualityと資本業務提携を行い、スマート農業事業に新規参入しました。

 ▶Happy Quality株式会社様へのインタビューはこちら!

今回は、地域の老舗企業×今熱いスタートアップという異例のタッグが生まれた経緯や、今後目指す将来について、明石吉田産業株式会社・代表取締役社長の明石真さんに取材をさせていただきました。代表の明石真さんや明石吉田屋産業株式会社の事業についてお聞きした、インタビューの前編をお送りします。

<会社概要>
①ENEOSガソリンスタンドをはじめ自動車整備・車検・車両販売・自動車保険などを扱うカーライフ関連事業
②LPガスをはじめ住宅設備工事、リフォーム工事などを扱う住環境関連事業
③産業用燃料油、工業用潤滑油、産業用機器などを扱う産業・法人向け事業

の3つを軸に、愛知県・静岡県内で1900年の創業以来、時代に合わせて地域社会に必要な商品サービスを展開してきた。現在は、地域の生活や産業に欠かせないエネルギーの供給を基盤事業として、地域に根差した様々な事業を展開している。

明石吉田屋産業株式会社HPより

 ー本日は、よろしくお願いいたします。まず初めに、明石さんご自身のことについてお聞きしたいと思います!2015年に代表取締役社長に就任されたとのことですが、それまでの経歴についてお話しいただいてもよろしいでしょうか?

大学卒業後の2000年に、現・明石吉田屋産業株式会社(当時は明石産業)のグループ企業である浜松の「明石石油」という会社の、取引メーカーである出光興産という石油メーカーに就職し、3年間働きました。代理店の子息教育というものですね。その後、2003年に明石石油に入社しました。

 ーちょうど20年前に明石石油に入社されたんですね。

はい、当時はセルフのガソリンスタンドが世の中に出始めた時期だったんですよ。今からすれば当たり前ですけど、それまでは規制で守られていてセルフの給油サービスが禁止されていました。規制緩和されたことで業界が大きく変わっていた変革期だったので、会社としても今までの体制を変えていかなきゃいけない時期だったんです。

正直に言うと、その時期はすごく会社の状況が悪くて。特にガソリンスタンド部門が非常に大きな赤字を作っていました。セルフになって激変した環境の変化にうまく対応ができていませんでした。それを、経営改革として大きく変えていこうとカーライフ事業に携わってきて、会社を黒字にすることができました。

その後、2007年に明石産業(現・明石吉田屋産業株式会社)の取締役になりました。ただ、当時明石産業も、明石石油の時と同じ理由でガソリンスタンド事業がかなり大きな赤字を抱えてたんですよ。そこで同じように経営改革で会社を良くしていきました。

明石真 代表取締役社長

ー最初にいらっしゃった「明石石油」と「明石産業」は元々同じ会社なんですよね?

そうなんですよ。西暦1900年に創業した会社なのですが、途中昭和30年に明石石油が分社化されました。オーナーはどちらも明石家で、自分が2015年に両方の社長になっています。ちなみに、2017年に明石産業と、浜松にあった同じく石油関連の事業を扱う吉田屋という会社が経営統合しまして、現・明石吉田屋産業株式会社になりました。

ー2つの会社の経営再建に関わられたんですね。その際は、新しい事業を立ち上げていくことで業績が上がっていった形でしょうか?それとも、業務改善などにも注力されたのでしょうか?

結論から言うとどちらもなんですが、先に注力したのは既存事業の立て直しです。これまでの考え方・やり方で赤字なわけですから、どんな理由があろうが、考え方ややり方を180度変えていくようなことも求めました。主に売上や粗利に見合った適正なコストに見直すことと、必要なコストに見合った売上、粗利の管理をしていくことの両面で業績を改善させました。

当時、僕は外から入ったばっかりだったので、どこを変えなければいけないのかはよく見えたんですよ。会社も良い時、悪い時がある生き物です。人の病気を治すように、どこが病気でどこを手術しないといけなくて、どこを体質改善しないといけないといった改革をスピード感を持って行うことができました。

社内が変わっていく中でこの会社で頑張っていきたい人が残ってくれて、一緒に頑張っていきましょうという前向きな雰囲気が徐々に醸成されていったと思います。

新しい事業で拡大していこうというのが初めからあったのではなく、最初に取り組んだのは「今の仕事をもっともっと良くしていこうよ」という改善の部分です。それで、大赤字だったのが一気に黒字になったので、意識改革や体質改善の効果を実感しました。

ー従業員の方も、明石さんと同じように強い思いを持った方々が残って一緒に立て直していったんですね。

そうですね、僕は人と関わるのが大好きで明るく前向きな性格なので、前向きな雰囲気を築くことが得意なのかもしれないですね。自分の持ち味が活かせたなと感じています。

ー長年経営をされている中で、壁にぶつかったりした時はどのように乗り越えて来られましたか?

いい意味で、「いい人と付き合う」ようにしています。良き思いを持っていたりとか、尊敬できる面があったりだとか。社外で相談できる・信頼できる関係を作っておくことで、悩んだときにアドバイスをもらったり、時には注意を受けたりすることを大事にしていますね。もちろん幹部の人はみんな信頼していますけど、社長という立場だと社内で悩みを本音で言ったり、逆に本音で社長に意見してくれたりする機会がなかなか作れないですよね。

また、会社が悪い状態の時のことを知っているので、二度と会社の業績を悪くしたくないと強く思っています。もし、自分が会社に帰ってきたときにいい状態だったら、多分そんなこと何にも考えてなかったんですよ。そんなに悩むこともなかったでしょうし、何となく経営をしている20年だったと思います。

なので、会社の業績が悪かった時代から、どうやったら良くなるんだろうというのを常に考えてきました。その経験があるからこそ、今ももっと良い会社にして地域のお客さんや働いてる人にも幸せになってほしいという思いが強いです。そんな想いが根底にあるからこそ、壁も乗り越えられたのではないでしょうか。

ー苦みを経験しているからこそ、会社を良くするための挑戦や改革ができるんですね。明石さんがチャレンジングなことをされていく中で、社内の方の反応はどのようなものでしたか?

そうですね、うちの会社は歴史があって長い年月をかけて事業を少しずつ広げてきた会社です。社歴が長い分、年配の方もいれば入ったばかりの若い方もいて、親子以上の年代の幅があって家族のような構成なんです。だからこそ、急に全部が全部新しい方にバットを振ったところで、適応できないこともあります。大事に引き継ぐべきところは大事にしながら、新しいことをやっていくという両輪を意識してきました。

なおかつ、大事にしてるのは適材適所ですね。個々を見て向き不向きや得意不得意があるので、なるべく向いていることをさせてあげたいです。もちろん、同じ仕事を同じメンバーで同じように長年やり続けて、組織が硬直化していくことは避けないといけません。

ちょっとした話ですが、人の組み合わせを変えたり業務ローテーションで別のことを経験してもらったりしてだんだん慣れていくことで、いざ新しいことをやる時に抵抗感なく進められると思います。これを20年30年同じことしかやってないと、ちょっとやり方変えるだけでも大変なストレスが掛かったりします。日頃から小さな変化を作って、変化に慣れた体質にしておくことが大事だと思っています。

ー新しい事業に触れてもらうみたいなところも大事なんですね。今おっしゃったように、100年企業というところで多くの方が会社全体で携わられていると思います。長年受け継いできて変えられない部分と変えてきた部分、従業員のみなさんに企業理念をどのようにお伝えされていらっしゃるのでしょうか?

僕が社長に就任したときに、経営理念を改めて明文化しました。

<企業目的>
社員の人間的成長と物心両面の幸福を追求すると共に、地域社会の豊かな生活の実現と産業の発展に貢献します。

そこで浸透させるために、当初は勉強会を毎月やったりして言葉で発信してきましたが、結局仕事の中で行動から学ぶことが一番だと思ったんです。いくら知識で覚えても、行動が変わってなかったら何も変わってないのと同じですよね。
変に言葉でいろいろやるよりも、経営理念を体現することを経験できる機会と環境を作ることが、一番大事だなと思ってます。

 ー新しい事業を立ち上げたり業態を転換していく中で、抜擢された人に「こういう思いで任せた」と仕事として役割を与えていって、その中で企業理念などを実際に体感してもらうんですね。

やる前は分からないですよね。社長が「あなたに期待してる」とか「この仕事にはこんな意味があって」とかって熱心に伝えても、本人は別のことを考えていたり不安を感じていたりするんです。なので最後は、「あなたのことをよく見てるからとりあえずやってみて」って背中を押してあげるようにしています。当然苦労はありますが、苦労した分振り返って「経験できて良かったです」と言ってもらえることも多くあり、経営者としてのやりがいを感じます。

経営理念にしても、ただ口で伝えるだけではなく、実際に経験する中で成長して実感してもらえるように努めています。

ーありがとうございます。では、事業のことについてお聞きしたいと思います。明石吉田屋産業さんは、ガソリンスタンドや住環境の関連事業などエネルギーを軸にしたところの事業に長年取り組まれてきましたよね。

はい、石油製品販売やガソリンスタンドの運営、LPガス製品販売やリフォーム事業、カーライフ事業など幅広く取り組んでいます。

ーその中で昨年4月に、社員の方のお子さんが交通安全をテーマに書いた絵をタンクローリーにラッピングしたという記事を拝見しました。伝統的なエネルギー事業だけではなく、新しい取り組みを始める際に「これは絶対に叶えたい」や「こういうことを軸にしたい」といった思いは持っていらっしゃいますか?

まず、エネルギー事業は地域の生活や産業に欠かせないものなんですよね。水などと一緒で、必ずなくてはならない生活インフラの一部を扱っているということです。

この「地域に寄り添って地域に根付いていく」というのが、長年大事にしてきた考え方です。ですので、エネルギーを通じて地域に根ざしてきて、しかも毎日お使いいただくなかでの僕らの使命は「安心安全にお使いいただく」というところなんです。絶対に切らしてはいけないし、安定供給・安心安全にお使いいただくことが一番大事です。

そういった日頃のお付き合いを積み重ねる中で、地域の方から「こういうのやってくれない?」という声が上がってくるんですよね。例えば、ガソリンスタンドに日頃からガソリンを入れに来ている方が、ちょっとした車の点検や整備をする時に、わざわざカーディーラーを予約して行くよりも日頃から人の顔が分かるところでやってもらえると安心だなと。

ー確かに、なじみのある場所が地域に一つあるだけで安心して暮らせますね。

いただいたご要望に少しずつ対応していって、今では車検を通すことができるカーディーラーと同じ資格を持った、国土交通省指定の指定整備工場を構えてやっています。お客様の声にお応えしていく中で事業が広がっていったんですね。

先ほどのタンクローリーの話ですが、「こどもミュージアムプロジェクト」という大阪の運送会社さんが始めた取り組みに参画しています。エネルギー供給を通じて皆さんに安心・安全にお使いいただくことで、地域の安心安全な生活を守っていくことに貢献できる。取り組みを通じてそんな地域になっていってほしいという思いで、運送会社の取り組みに共感してプロジェクトに参画しました。

参考:https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1053327.html

 リフォームの事業も同じです。コンロや給湯器、水回りの機器販売や工事なども行っています。ガス周りの機器が壊れた時に、「あのガス会社に聞いてみよう」「あの会社だったら何でも親身に相談のってくれるし、あの担当者だったらぱっと来てくれてやってくれそう」という安心感が大事だと考えて、リフォーム事業の展開を始めました。

繰り返しになりますが、地域の方々が安心安全に生活できる環境を作っていきたいという思いをずっと持っています。

ー地域の方にとっては、エネルギーまわりや日常生活で何か困ったことがあったときに、一番に顔や会社が浮かぶような存在となっているんですね。

働いてる人にとっても、やっぱり「頼られる」ってやりがいですよね。

会社が赤字の状態だった時は、考え方もやり方も雰囲気も良くありませんでした。どうやったら黒字になって、何よりも働いてる人がやりがいや誇りを持って働いてくれるかを考えた時に、お客さんのお困りごと解決を通して「やってくれてありがとう」という言葉をもらえる喜びを一つ一つ作っていこうと思ったんです。

新しいことを始めるのは失敗が付き物です。うまくいかないことの方が多い。会社として失敗を許容し、従業員に思い切ってやってもらうようにしています。前向きな失敗は絶対に責めません。社風改善も含めて「いいですよ、うちでやりますよ」とチームでみんなでやっていこう、という雰囲気を作ってきて、会社が大分変わってきました。

ー会社の発展も事業の拡大も、全て地域の方との関わりが根底にあるんですね。では、エネルギー事業や地域の方のお困りごとに答える事業の中でも、特に農業界との関わりはどのようなものがあったのでしょうか?

エネルギー事業では、冬場にビニールハウスを暖房で暖めるための重油などの取引を通じて、農家のお客さんと多くやり取りをさせていただいています。お取引を通じて感じるのは、大きな社会問題である農業人口の減少高齢化です。取引のある農家さんのほとんどが、高齢でやり手や跡継ぎがいない状況です。

弊社は、漁業や農業を始めとした地域の一次産業とは古く長い取引があります。浜松って自動車関連の製造業が目立ちますけど、農業も欠かせないものですし。日本全国で食料自給率などの問題が出てくる中、一次産業は絶対衰退させてはいけないなというのは、日頃から感じていたところです。そこで、何か農業界に貢献できる・農業が活性化できるようなことができないかなと考えています。

ー農業を始めとした一次産業には昔からの繋がりがあるんですね。では、後編では株式会社Happy Qualityさんとの資本業務提携を通じて、実際に農業関連の事業でどのようなことをされるのかを中心にお聞きしたいと思います!

後編はこちら!

[会社概要]
【会社名】明石吉田屋産業株式会社
【URL】https://www.ay-sangyo.co.jp/
【創業】1900年(明治33年)
【設立】1946年(昭和21年)12月
【代表者】代表取締役社長 明石 真
【所在地】浜松管理本部:〒430-0944 静岡県浜松市中区田町228-5
     本社所在地:〒441-8075 愛知県豊橋市神野ふ頭町5-3

取材・執筆担当:EXPACTライター 森田


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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