【まきチャレ2023開催記念インタビュー | 株式会社オンラインドクター.com後編】まきチャレをきっかけに動き出した、オンライン診療を通じた地域医療の課題解決とは?
昨年、牧之原市が主催するビジネスコンテスト「第2回牧之原市チャレンジビジネスコンテスト(以下、まきチャレ2023)」が開催されました。
まきチャレ2023は、牧之原市の「産業資源」と「観光資源」を活用して、自らの事業を地域と共に発展させるビジネスプランを全世界のスタートアップ企業から募集し、評価するビジネスコンテストです。第2回開催である今回は、EXPACT代表の髙地が審査員として参加しました。
本記事では、まきチャレ2023でファイナリストに選ばれた株式会社オンラインドクター.com(以下、オンラインドクター)の取締役CRO兼CAOの細井 康平さんにインタビューをさせていただきました。前編では代表の鈴木さんに医師の視点から見たサービスや業界についてのお話をお伺いしましたが、後編ではピッチに立たれた細井さんご自身の経歴や会社・事業について、さらにまきチャレ2023への参加について詳しくインタビューさせていただきました。
代表鈴木さんへのインタビューはこちら!
▶https://startuplog.com/n/neb3d3325356c
まきチャレ2023について詳しくはこちら!
▶https://expact.jp/makichare2023/
株式会社オンラインドクター.comは「患者が必要な時に、必要な場所で、いつでも、すぐに、自分にあった医療機関とマッチングできる世界」をビジョンに、患者が予約なしでオンライン診療を受けることが出来るメディカルプラットフォーム「イシャチョク®」を提供しています。医師も自身の手の空いた時間で、仮想待合室にいる患者にアクセスすることが出来るため、効率的に新規患者を獲得することが出来ます。
イシャチョクHP:https://ishachoku.com/?cats_not_organic=true
X(旧Twitter):https://twitter.com/ishachoku?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
ー本日はよろしくお願いいたします。細井さんはもともと医療業界との関わりがあったのでしょうか?
経歴としては、通信営業やメディアの事業、M&Aの新規事業などに関わってきましたが医療系にはほとんど触れたことがありませんでした。入社したきっかけはご縁で繋がったといったところですね。
ー医療関係の方々とはまた違う視点で事業を考えられているのですね。細井さんは現在オンラインドクター.comではどのような業務を担当されているのでしょうか?
開発以外を管掌しています。具体的に言いますと、法人営業、インサイドセールス、マーケティングを管掌しています。総務や労務、人事関連も兼任しており、また、前職の経験を活かして広報もみています。
事業計画や資本政策などは、代表ともう1人の取締役と3人で話し合っています。
ー医療系は少しハードルが高いイメージがあるのですが、この業界に入られるときに新しく身につけられたスキルや苦労されたことなどはありますか?
確かに参入の入口は難しいと思いますが、私にとっては「誰と働くか」が大事だったので、ハードルが高いかどうかは気にしていませんでした。ただ、身につけたスキルとして、医師に対する営業と今まで経験してきたtoBの営業は大きく違ったので、コミュニケーションの取り方などはスキルとして必要だと思い、読書や医療機関向けにサービスを提供している方々と会い、学んでいました。
ー他の企業とのアライアンスというと、例えば福利厚生の一環でオンライン診療を提供するといったような形になってくるのでしょうか?
おっしゃる通り、私たちのオンライン健康相談やオンライン診療を福利厚生としてご提供することもあれば、介護施設に対して、オンライン診療を導入していただくような形もあります。
また、大手からベンチャーまで幅広い業態を含め「医療系に参入したいが参入障壁が高く入りづらい」といったお悩みもお聞きします。オンライン診療領域への参入を検討する上で、1から開発するにも社内にリソースがなければ、人材を採用することも難しいケースが多いです。そういった企業と私たちのシステムをOEMで提供しています。
さらに、他社さんのオンライン診療システムは再診や予約が必須という流れとなっていますが、私たちのイシャチョク仮想待合室型オンライン診療は、初診の患者さんが前提となっており差別化ができています。既にtoCとのリレーションを持っている企業に対して、オンライン診療領域において業務提携を進めていきませんか、といった形で提携を進めることでより多くの見込み患者さんを集めています。
ー協業と言っても色々な形があるんですね。基本的に「誰と働くか」が大事とのことですが、細井さんは具体的にどんな方と働きたいとお考えでしょうか?
私の中で仕事においてモットーにしていることは、「楽しんで働けるかどうか」だと考えています。24時間という有限の時間の中で、8時間睡眠すると考えると残りは16時間程度しかありません。その中で、ご飯を食べる時間などを考えると、一緒に働く仲間との時間が多くの割合を占めていると思います。
この限られた時間を同じ価値観を持った方々と一緒に働けることがお互いの成長にも繋がりますし、何より楽しく仕事ができると考えています。そういったことに共感してくれる社員が集まっていけば、実現したい目標を達成していけるんじゃないのでしょうか。実際、初めて代表の鈴木に会った時もこの人と働いたら楽しそうだなと感じたのが、入社を決めたきっかけにもなりました。
ー社内の雰囲気的にも、やはりそういった価値観を持った方が多くいらっしゃるという環境になるのでしょうか?
そうですね。つらいときでも楽しく働いていこうとか、相手の立場にも立ってコミュニケーションを取れるだとか、まさにそういった価値観や共通認識を持てていると思います。
ー同じ価値観を持った方が集まっているんですね。オンラインドクター.comさんのサービスは、「初診からオンライン対応ができる」という点が他のサービスと大きく異なる点の一つではあると思います。日本で今までこのようなサービスがあまりなかったことに関して、ガイドラインや法律的な背景があったのでしょうか?
最初に医療機関が導入したオンライン診療のサービスがリリースされた時は、コロナ前だったこともありオンライン診療における初診ができませんでした。そこからコロナ禍になり対面で病院に行けない環境となり、電話診療も含めて時限的措置としてオンライン診療の初診が認可されました。その後、2022年4月にオンライン診療における初診が恒久化され、当初の距離制限も撤廃されました。
私たちは創業したのが2020年なので、2期目のタイミングで「いつか恒久化されること」を見越して開発し、並行して特許を出願しているといった流れですね。
ー将来的な可能性を見越して開発をされていたのですね。オンライン診療というのは、海外では一般的なのですか?
日本と比べると普及していますね。
特に、アメリカは国土が広く病院に中々通えないところもあって、オンライン診療が普及しています。中国でも多くの医療機関がオンライン診療を導入していたりします。日本は先進国の中でも普及率は低いです。海外の場合、病院に行くと高額な費用がかかったり、何時間も待ったりするので、病気にならないように意識している人が多いと思います。
また、日本の制度だとどうしてもオンラインより対面診療の方が病院側にとってメリットが多いんですよね。金銭的にもオンライン診療のほうが安くなってしまうので、わざわざ減収になるようなことはしません。
そのような背景もあり、日本は先進国の中でもオンライン診療は遅れているとは感じています。
ーそのような問題に対して、イシャチョクは医師に対してどのようなアプローチをしているのでしょうか?
イシャチョクは、弊社が集めている患者さんを手が空いている時だけオンライン診療していただくモデルとなっています。わざわざ対面で来てくれる患者さんをオンライン診療に回す必要がなく、予約もしなくていいので医療機関に対してもメリットになると考えています。
患者さんは、オンライン診療において再診しか受け付けられない場合、かかりつけの医療機関がシステムを導入しなければオンライン診療を受けることができません。体調不良になったり薬が欲しいとき、かかりつけの医療機関次第で直接行かざるを得ない状況があります。軽度な症状であれば、かかりつけの医療機関でなくても「今すぐに薬が欲しい」という患者さんニーズも多く、そういった時に利用することで私たちのシステムを導入している医療機関に診察してもらえます。
医療機関のメリットも最大限に追求しつつ、患者さんニーズもつかんでいるのがイシャチョクだと考えています。
ーなるほど、ありがとうございます。ちょっとした疑問なのですが、オンライン診療で薬を処方してもらった場合は、患者さん側はどのような形で薬が受け取れるのでしょうか?
来局して薬を受け取ることができます。この場合、薬を受け取る薬局は患者さん自身が決めなければいけません。医療機関から患者さんが指定した薬局に直接FAXされます。そのFAXにオンライン診療で対応したという情報を記載することで、一時的な原本として取り扱うことができます。後日、医療機関から薬局に対して、処方箋の原本を郵送します。
その後は、患者さんが来局し、薬を受け取りにいきます。
ー近くの薬局を指定すればあまり大きなロスがなく、普通に病院にかかったときと同じぐらいのスピード感で薬を手にすることができるんですね。
私たちのオンライン診療においては、待ち時間が短いので、診察の待ち時間や診療時間、会計の待ち時間、薬局で待つ時間などを考えると、私たちのオンライン診療のほうがスピード感持って薬を受け取ることができると思います。対面で医療機関に行った場合、診察だけだけでも数時間かかる場合もあります。
ー服薬指導などもオンラインで行われるのでしょうか?
はい、薬を指定した住所に配送することもできます。この場合、対面で服薬指導ができないため、オンライン服薬指導を実施する必要があります。薬局が導入しているオンライン服薬指導システムを利用し、ビデオ通話しながら薬の飲み方や注意点などを説明します。配送や薬代は、オンライン服薬指導システムに従い、クレジットカードなどで決済する必要があります。
私たちも独自のオンライン服薬指導システムを開発する計画を立てています。
ー確かに対面で診察を受けるときも病院と薬局、それぞれにお金を払いますよね。実際に利用されている医療機関の方からの声などはありますか?
手の空いた時だけ使えばいいので、医師の方々からもすごく助かるというお声をいただいています。シフトなどを組まなくて済むので、完全に手の空いたタイミングで全国の患者さんを診ることができる点は評価いただいています。
ーでは続いて、まきチャレ2023への参加についてお聞きしたいと思います。まきチャレに参加したのはどのような経緯があったのでしょうか?
オンライン診療システムを行政と一緒に広めていきたいと考えていたからです。
黎明期でもマーケットだと考えているので、広めていくきっかけ作りを行政とご一緒させていただき、進めていきたいと考えていました。そのときに、代表の鈴木が行政が関与しているコンテストを調べる中で、牧之原市は新宮市と人口的な規模も近く医療側のニーズも地域医療という観点であるだろうというところで親和性を感じ、応募してみようとなったのがきっかけですね。
ーピッチでは「牧之原市とコラボレーションした介護向けのオンライン診療の実現」ということをお話されてたかと思いますが、牧之原市ならではの課題感などは感じていらっしゃいますか?
現在も牧之原市の方々と定期的に打ち合わせをしています。僻地医療でよくある課題は牧之原市でも耳にすることが多いです。例えば、市内に産婦人科がなく、市外の病院に行かないと出産できないとかですね。
開業医の高年齢化も課題としてあると思います。次世代がいないといった状況などが起きると1次医療が崩壊してしまう恐れがあります。そういった課題を牧之原市の方々は解決するために何ができるか真摯に向き合っており、弊社にできることを模索している状況です。
介護領域に関しては、介護施設でのオンライン診療活用における成功事例を牧之原市で一緒に作っていくために課題整理しています。実現後は、市内から市外まで普及させていきたいと考えています。
ー行政の方とも密にコミュニケーションをとられているんですね。実際にまきチャレを経て、今後牧之原市ではどのようなことを展開されていくご予定なのでしょうか?
牧之原市の介護施設でオンライン診療を導入し、トライアルしてみようという話をしています。また、牧之原市で開業する先生を増やすためのきっかけ作りをお手伝いできないかディスカッションしている最中です。
ーまきチャレをきっかけに、牧之原市とオンラインドクター.comさんがコラボした形で地域医療に対する課題解決が進んでいきますね。では、オンラインドクター.comさんとして今後協業したい業界やサービスなどはありますか?
今は多方面の業種業界の方とお話しできたらと考えています。医療業界の企業はもちろんですが、不動産業界、旅行業界などユーザーの満足度向上やサービスラインナップの拡大、差別化のニーズがある企業とは親和性が高いので、色々と会話できたら嬉しいと思っています。
ーどの業界でも可能性は無限大にあるということですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました!
[会社概要]
【会社名】株式会社オンラインドクター.com
【URL】https://corp-online-doctor.com/
【設立年月】2020年10月
【代表者】代表取締役CEO 鈴木 幹啓
【所在地】〒108-6028 東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟
(取材・執筆:森田)