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いつどこでも必要な医療が受けられる世界をつくるメドメインの病理AI解析ソリューション「PidPort」とは?

今回は、医療業界に病理AI解析ソリューションを展開するメドメイン株式会社の代表取締役CEO飯塚統様にインタビューさせていただきました。

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本記事では、同社の設立背景から現在まで、展開している病理AI搭載のデジタル病理支援クラウドシステム「PidPortのサービスや導入事例についての紹介、またメドメインが医療業界にかける思いについて迫ってまいります!


ー本日はよろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。


ーまず初めに、会社設立の背景から現在までの流れについて教えてください。

もともとこの会社は2018年に、私が九州大学医学部在学中に創業し、当時は九州大学発スタートアップという形で始まりました。私自身もAI・Webを中心としたソフトウェア開発などをしており、メディカルとエンジニアの両方のバックグラウンドを持っています。

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事業を行っている背景としては、患者さんの組織や細胞を見てがんの有無や治療方針などを判断する”病理医”という専門医がいるのですが、日本国内だけでなく、世界的にも不足しているという現状があります。現場の課題としては、人手不足のために限られた人数で診断・検査をしていることが大きく、深夜や早朝から診断業務を行ってなんとか成立している医療現場も多くあります。

そして、患者さんの視点で見ると、病理医不足により病理診断ができる病院が限られているため、地方では大きな病院であったり、あるいは衛生検査所に外注をして検査を受ける必要があります。

その結果、診断結果が出るまでの待ち時間も患者さんにとっては精神的な負担になります。がん患者さんの場合には、その間にもがんが進行してしまうケースもあります。


ーそのような背景・医療業界の現状から起業されたのですね。”病理医”の不足、がんの診断にそれほどまで労力や時間がかかるとは驚きでした。では、具体的にはどのようなプロダクトを展開しているのでしょうか?

病理AI搭載のデジタル病理支援クラウドシステム「PidPort」というWebシステムを主に展開しています。病理医のサポートを行うことを目的として、Google Chromeなどのブラウザを用いて使い始めることができるのが特徴ですね。メールアドレス・所属組織・名前を設定することですぐに使い始めることができます。


20220627_PidPortサービス紹介資料

それでは、PidPortについて紹介していきます。

①AIによる病理画像解析機能 
②遠隔病理診断/コンサルテーション支援、カンファレンス、教育研究支援のための症例共有機能
③病理標本データのデジタル保管庫(アーカイブ)

PidPortは大きく上記の3つの機能を持っています。

また、PidPortをより利便性高くお使いいただくために、プレパラートのスキャニングサービス(Imaging Center)の提供も行っています。

通常の病理診断では、患者さんから採取した検体からプレパラートを作成し、それを顕微鏡で病理医が目視によって診断しているのですが、PidPortではプレパラートを画像化したWSI (Whole Slide Image)と呼ばれる画像で扱うことで、デジタルでの病理診断を支援しています。


ー意外にも医療業界はまだまだアナログな部分が多いのですね。これからデジタル化・DX化が大いに期待される分野であるように感じましたが、PidPortを導入することで病理診断はどのように変わるのでしょうか?

先ほども機能についてはご紹介しましたが、PidPortを導入することで、大きな課題となっている医療機関の業務負荷が大幅に軽減されます。

それだけでなく、検体を一度スキャンしてデータ化することで、クラウド上でいつでも、どこからでもアクセスして診断することが可能になり、診断について外部の医師の意見を求めるコンサルテーションなども容易になります。また、病理医のみならず臨床医も含めたカンファレンスの開催、また研究開発における病理データの利用など、PidPortによって病理データを活用する幅が大きく広がります。

通常、検体をのせたプレパラートは見やすくするために染色しているのですが、この染色は3年ほどするとだんだん色が抜けてきて、再度検体を見直す際に再染色しないといけないような問題があります。

しかし、データとしてデジタル保管しておくことで、プレパラート作成時の鮮明な状態のままでかつ検索性高くデータとして蓄積していくことが可能です。また、保管場所に困ることもありません。こうした病理の画像データをブラウザ上でAIの解析にかけることで、病変部位の可視化も可能になります。

ーPidPortはブラウザ上で、手軽に使い始められるというところもとても画期的ですね!実際に病院や施設等で導入したい際にはどのようにすればよいのでしょうか?

まずは、サービス紹介ページから、お問い合わせをいただけますと幸いです。ご利用用途に応じて最適なご提案をさせていただきます。


ー実際に、導入された病院や施設ではどのような変化や実例がありますか?

今まで病理診断をする際、複数の医師による診断が求められる場合、プレパラートを郵送したり、車で物理的に運ぶなどして診断するというアナログな方法がとられていました。

しかし、PidPortを導入することで、遠隔地の病院にいる先生にもブラウザ上で簡単に見てもらうことが可能になります。データをクラウドで管理することで、複数施設が連携した診断が容易になる他、出張先や自宅等でも業務が可能になるメリットもあります。これにより、先生方にとっても、また患者さんにとっても、より早く正確な診断に繋がる点は大きな変化だと言えます。

実際の例として、福岡県の公立八女総合病院様の事例をご紹介します。公立八女総合病院様では、院内の病理医の先生がお一人で多くの診断をされており、他施設へのダブルチェックやコンサルテーションの依頼のために、先生自ら病理ガラス標本を物理的に車で運搬し、また遠方の施設への依頼は郵送で対応しており、時間的にも業務的にも大きな負担になっていました。それがPidPortの導入によって、日常的にパソコンを繋いで病理診断のコンサルテーション・ダブルチェックを行う体制にシフトすることが可能になり、業務の負担が大きく軽減されたとお聞きしています。

また、国際医療福祉大学様では、教育の面から役立てていただいております。同大学では、約140人の医学生の講義に際して、約5,000枚のプレパラートを準備する必要がありました。しかし、PidPortを活用することにより、人数分のプレパラートを物理的に用意する必要がなくなり、共通の画像データにアクセスすることでスライドの準備工数を大幅に削減することができました。また、学生さんにとっても、時間・場所を問わずデジタル画像にアクセスすることができるようになったため、顕微鏡のある教室でなくとも、ご自宅で予習・復習ができるようになり学習環境がより充実しました。


ー実際の医療現場のみならず、医療教育の場でも活用されているんですね!プレパラートをデータ化することでいつでもどこでも閲覧可能というのは、改めて画期的なサービスだと感じます。ところで、現在の医療業界の動きについて飯塚さんは、どのように見ていらっしゃいますか?

現在の医療業界は業界全体としてデジタル化が非常に遅れているのが現状でして、デジタル化、クラウドの活用によって大きく業界が発展すると考えています。メドメインでは、まず病理分野でのデジタル化の取り組みを通して医療への貢献を目指しています。


ーなるほど、医療業界全体でシフトしていく必要がありそうですね!「テクノロジーでいつどこでも必要な医療が受けられる世界をつくる」というメドメインのミッションについても教えてください。

弊社では、AIやソフトウェアの力によって、患者さんにとっていつでもどこでも必要な医療が受けられる世界を作りたいという思いから、このミッションを掲げています。

私自身の実体験として、以前腎臓病を患い、病院に長らくお世話になったことがあります。患者としての視点、医療に関わる者としての視点、双方の視点をもって医療業界をみた時にデジタル化、ソフトウェアの力によって多くのことを便利にすることができると考え、この事業を行ってきました。


ー実体験を通じた強い思いが非常に伝わってきました。では、事業を行う上で重要視していることはありますか?

私自身も様々な苦楽を経験してきましたが、やはり「何を目的として何のためにこの事業を行っているのか」ということを忘れずに情熱を持って事業を行っています。

メドメインの場合には、何よりも患者さんのために必要な医療を受けられる世界を作りたい、そのために医療を提供している医療現場の方々の支援をしたい、そのような思いを大切にしています。


ー自分自身に常に事業の目的を問いかけることで情熱を持ち続けていらっしゃるんですね。最近ではPSP株式会社さんとの提携も発表されていましたね!その目的や背景、今後の展望についても教えてください。

7月にPSP株式会社との資本業務提携を発表しました。
PSP株式会社(以下:PSP)は、医療機関向けに医用画像管理システム(PACS)事業を行っている会社で、日本国内において2,200施設超の大きな顧客基盤を持っています。
提携背景としては、PSPが行なっている事業と弊社の事業の親和性がとても高く、提携によって双方にとって大きな利点があると考え、今回資本業務提携に至りました。

今回の提携により、PSPが有する2,200施設の顧客基盤に対して、弊社のPidPortの販売をPSPが進めていくことで、営業力の大きな強化が見込めます。
また、PidPortのベースとなっているクラウドインフラにPSPのシステムを活用することで、PSPが保有する院内システムとの連携が容易になり、システムを利用される病院にとっても利便性の向上が見込めると期待しています。

会社の展望としては、メドメインはこれまで病理AIを中心とした製品開発に注力してきましたが、引き続き開発と並行しながらではありますが、今後製品の販売・普及に力を入れていきたいと考えています。


ーこれから注力する医療業界へのさらなる認知拡大は、メドメインの掲げる「テクノロジーでいつどこでも必要な医療が受けられる世界をつくる」にも繋がっていくのかもしれませんね!本日は、ありがとうございました。


[会社概要]
【会社名】メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)
【連絡先】:info@medmain.com
【公式サイト】:https://medmain.com
【プロダクトサイト】:https://service.medmain.com
【設立日】2018年1月11日
【事業内容】医療ソフトウェア・クラウドサービスの企画・開発・運営および販売
【代表取締役/CEO】飯塚 統
【所在地】[東京オフィス] 東京都港区南青山2-10-11 A青山ビル2F
[福岡オフィス] 福岡県福岡市中央区赤坂2-4−5 シャトレサクシーズ104


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