【INTERVIEW続編】地域全体で”農業”を支え、未来に繋がる「食」を育み守っていく存在に。
静岡県西部地域・愛知県東部にてエネルギー供給事業を担う明石吉田屋産業株式会社。
前回のインタビュー続編として、本記事では新規参入したスマート農業事業に関して、実稼働や近況、また現在の課題などについても代表取締役社長の明石真さんにインタビューさせて頂きました。
▼前回のインタビューはこちら
ーお久しぶりです、本日もよろしくお願いいたします!
お願いいたします。
ー前回の取材時から数ヶ月経ちました、新規参入をされたスマート農業事業(トマト栽培)に関して、教えてください
実際にはじめてみて、農業の難しさを痛感しています。
昨年の夏は、ニュースなどでも騒がれましたけど、猛暑の影響で価格が高騰した”トマトショック”のように、生育状況が芳しくなくて、生き物が相手ということはこんなにも大変なことなのかと、農家さんの苦労を身に染みて感じていますね。
農業に携わってみて、こんなに手間暇をかけても、最後には売り物にならないことがあり、廃棄されている現実も目の当たりにしました。やってみないと分からない苦労というものも知りましたね。
農業に触れて、生産者がちゃんと成り立つような環境がないといけないと思いましたし、そこでHappyQualityのビジネスモデルについて今一度、素晴らしいと感じることもできました。
ー実際にやってみないと分からないことって当たり前ですが、大きいですよね。”難しさ”も感じている農業事業ですが、現在はどういった形で事業を進めているのでしょうか?
基本的には、2名が主軸になり事業を進めています。とはいえ、その他にもメンバーを交えて定例ミーティングを行うなど課題を洗い出し、みんなで話し合って進めていますね。先ほども言いましたが、自然や生き物が相手となってくるので、常に何か問題や課題があるんですよね。やっぱり人間の思う通りにいかないもんだな〜って。そして、育てていく過程でどこかやっぱりうまくいかないとこがあると、最後のところに影響が出るんですよね。
常に試行錯誤していますが、HappyQualityさんの技術指導には本当に助かっています。やっぱりしっかりと経験値だけじゃなくて、専門家が理論に基づき、根拠を持ってしっかり指導してくれるので安心感もありますよね。こういう場合にはこうして、とにかくなんとかやっている感じですが、それも農業の醍醐味だと感じています。思い通りにいかないものなので、ああでもないこうでもないって言ってうまくいったときなんかやっぱ嬉しいですしね!
ー簡単にいかないからこそ、その過程におけるチームの結束力なども重要になってきそうですね。実際に今、課題となっていることがあれば教えてください。
トマトを作るということが大前提なんですが、それでも廃棄がでてしまうことがあるんですよね。やっぱりもったいないです。未利用食材をどのように活かすことができるのか、考えています。ちなみに、廃棄といってもちょっと傷がついてしまったり、柔らかくなりすぎてしまったり、食べる分には問題ないんですよ、凄く甘いですし。製品として出荷してしまうと、もう2日〜3日で腐ったようになってしまうんですよね。
農業事業に関するメンバーも、栽培に触れるようになって廃棄における問題意識を持っています。社内で定期ミーティングしてるときに廃棄活用のアイディアをメンバーで出し合っていたのですが、こんな面白い案もありました。動物園であれば、様々な動物がいるわけだから、野菜を食べる動物に廃棄トマトを提供してはどうか?知り合いを通じて、実際に動物園に聞いてもらったのですが、トマトを食べる動物がいなかったようで、結局この案はボツになってしまいました(笑)
このように廃棄に課題を感じる中で、地元である浜松の食品メーカーやレストランなどの飲食店さん、加工業者さんに提供できるのではないかなと思っています。実際にお話する中で、興味を持ってくださる事業者さんもいるんですよ。今の時代ですから、SDGsに関心をもってらっしゃる企業も多いです。
なにより地元で作っているものが、地域に流通して、地域のためになっていくことは凄くいいことだなと考えています。
ーSDGsが広く認知される時代で、まさに廃棄における問題や課題に直面されているのですね。”地元”や”地域”という言葉もキーワードのように思えました。
大切な「食」というものに対して、地域に根付いていく部分と生産している場所っていうのは深く結びついていると思っています。なので、もっと地域の方に農業やその現場に強い関心をもってもらいたいです。
興味をもった地元の方が農園を見学をできるような受け入れ施設も作りたいと考えています。浜名湖のほとりでロケーションもよいですし、こういう場所でこうやってトマトを作っていますよと知ってほしいですね。
そして、背景として、うちはやっぱり昔から地域の企業だったので、エネルギーの関わりから農業とは深い繋がりがあります。その農業が衰退していく現状を見て、新規参入を決めました。直接、僕らが関わることで自分たちがこの農業の業界を何とか盛り上げたいという想いを持っています。
地域の方にもこういった現実を知ってもらわないといけない、とも感じています。ものが流通していることって当たり前ではないですし、だからみんなで「食」を守っていく、農業をちゃんと大事に考えないといけないんだなっていうのが、ちょっとずつでも地域に浸透していくといいなと思っています。
ー「食」は誰にでも共通する、必要不可欠なものです。地域全体が理解していくことで業界の底上げを図りたいですね。今後、見学ができるようになると地域の企業や個人など多くの方に改めて農業を知ってもらうきっかけ、明石ファームはそんな存在になりそうですね。
見学は、子供にも来てもらいたいんです。農業に触れる機会って今、どんどん減少しているように感じています。エネルギー事業のガソリンスタンドには、毎年中学生が職業体験に来ているんですよね。そういった職業体験の際にも、職業の選択肢に農業って入ってないんじゃないかな。少子高齢化で、大人になって地域から出ていってしまうのではなく、こういう仕事があるということをきちんと知ってもらい、地域の未来を担う子供たちに農業を身近に感じて興味を持ってほしいです。地域のものに目を向けてっていうところですね。
なんでも当たり前にスーパーで買えるのではなく、農家さんがこうやって苦労して作っているということを知って感じるのと、知らずにあるものが当たり前に生きていくことは全然違いますからね。
また、「2024年問題」と言われるように、これから物流業界も大変じゃないですか。当たり前に新鮮なものが全国各地から届くという世界は難しくなってくるんではないかなと感じています。だからこそ、やっぱり地域のものを地域の人として、大切にしていくこともすごく大事で、そういう世の中になっていくと思うんですよね、地域で成り立つような。
人間社会がまたちょっと違う方向にいく転換期じゃないかなと捉えています。
ーたしかに、農業って職業としてはあまり身近にない気がします。「2024年問題」も人材不足が深刻化すると言われていますが、どちらも職業を知る機会が生まれることで、価値観も変わってきそうです。事業規模は、今後どのように展開されていくのでしょうか。
そうですね。まず、受け入れ施設を用意して、希望者がいれば見学を受け付けるようなイメージです。そこから広がっていき、地元の小学校や中学校、高校にもなにか職業体験の場のようなことを提供していけたらと思っています。今、HappyQualityさんと取り組んでいる農業は、スマート農業なので、デジタルとの融合やアプリなどを通じた現場での業務や作業の利便化などそういったところも知ってもらいたいです。
そして、農業を拡大していくことだけが目的じゃないんです。僕らがこうやって発信していくことで、同じ地域の企業さんが興味を持って、一緒にやりましょうって、地域の会社で盛り上がっていくことが大切だと感じます。やっぱり農家さんだけじゃもう厳しい時代です。地域で農業を支えていくような時代になっていくんじゃないかなと思って、僕らが初めにスタートしましたが、地域でこの農業を支えていこうと強く思っています。
振り返ると、これまではどうしても自社の利益が最優先だったり、競争社会という中で生きていたんです。しかし、立ち止まって考えたときにこの地域に何ができるの?って。この地域で経済活動してるんだったら、地域に何が残せるのか、地域に何ができるのか、そういったことをかけていたらダメだなと思いました。だから僕はもう、地域の会社の使命っていうか責務だと感じていますよ。
身近なところで農業に興味を持って、既に見に来て下さった企業もいるんですよ。なので、こういった同じ想いを持っている企業さんはきっとあると思うので、自分たちのこの農業事業に関してもどんどん発信をしていきたいです。
ノウハウがないからやらないという選択をしている企業もあると思うので、自分たちの農業事業を発信することでなにかきっかけになってほしいです。
ー地域で農業を支える、その実現に向けて先頭を切り実践されているのですね。地域に根差していらっしゃる明石さんだからこその農業に対する熱い想いも強く感じました。関心を持った場合でも、農業に新規参入を決意することは決して簡単ではないことのように思います。
例えば、個人として農業をやってみたいと思っても独立となると、ハードルも高く諦めざるを得ないことがあると思います。うちであれば、企業に勤めて農業に携わることも可能ですね。そういった需要もあるのではないかと、考えています。
地域での仲間を増やしたいという想いもあるので、もちろんうちでやっていくのも良いですし、後に独立してやってみたいということも支援したいですし。
また、ダブルワークみたいなのも良さそうですね。ある程度柔軟な働き方をしている方であれば、週に何度か農業というような。必要に応じて、色々な可能性があると思っています。
ーなるほど、そういった形での受け入れ先があることは、ファーストステップとして農業に足を踏み入れやすいかもしれないですね!50代やそれ以上、セカンドキャリアとして農業に興味を持つ方も一定数いるようなイメージがありますね。
地域の企業もなかなか自分たちで農業に新規参入、ゼロからはじめることって難しいと思うんですよね。一方で、定年が伸びて、雇用を守っていくっていう意味ではどの会社も今、悩んでいることですし、キャリア支援に取り組んでいかなくてはいけません。そういう中で、雇用の器を連携してくことなども、やりがいがありそうですね。まさに、一緒に地域農業を守っていく形です。
ー地域を軸に、農業やその未来に本気で向き合う明石さんの積極的な姿勢がみえました。あらゆる可能性を秘めたスマート農業事業、今後もまた取材させてください。本日はありがとうございました。
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[会社概要]
【会社名】明石吉田屋産業株式会社
【URL】https://www.ay-sangyo.co.jp/
【創業】1900年(明治33年)
【設立】1946年(昭和21年)12月
【代表者】代表取締役社長 明石 真
【所在地】浜松管理本部:〒430-0944 静岡県浜松市中区田町228-5
本社所在地:〒441-8075 愛知県豊橋市神野ふ頭町5-3
取材・執筆担当:EXPACTライター 坂井