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東大IPCが手掛ける人材支援、その裏に隠された熱い想いとは?

今回は、2019年に東大IPCに入社し、創業期から成熟期までテック系スタートアップ約100社に対する人材採用、組織構築、採用広報などの支援を担当している⼩澤 彩織さんにお話を伺いました。

こちらの記事では、東大IPCの人材支援について小澤さんにご紹介いただきます!

東大IPCにて人材採用、組織構築、採用広報などの支援を担当している小澤彩織さん

スタートアップログでは、全4回にわたり東大IPCの各担当者様への取材記事をご紹介していきます。

ー⼩澤さん、本日はよろしくお願いいたします!
よろしくお願いいたします。

ーはじめに、東大IPCの投資先へのハンズオン支援について教えてください。
私たちの投資先はディープテック領域のスタートアップが比較的多いことが特徴です。ライフサイエンス、ハードウェア、素材、AIなど、新しい価値やサービスを世に展開していくことに挑んでいるスタートアップが多数あります。

このような特徴から、顧客としても実証や協業の相手としても、事業会社との連携が非常に重要になってくるので、事業会社との連携支援や営業支援を行っています。
また、投資担当者がその投資先スタートアップのメンバーの一員として経営者の相談相手になりつつ必要なサポートを行う場合もあります。

また、プロダクトのPOC検証のための共同研究や、先生からのアドバイスを得ることでプロダクトの磨きをかけたいというリクエストをよく頂く中で、私たちの方で可能な限り産学連携の「橋渡し」のお手伝いもしています。

もちろん、これらは全て一例であり、日々のお悩み相談なども含めて、企業に寄り添うことが私たちのハンズオン支援のスタイルです。

ー東大子会社ならではの支援もあるのですね。では、投資先へのハンズオン支援について、小澤さんが関わっている「人材支援」での具体的な事例を教えてください。
それではまず、「スタートアップにおける人材採用」に対する支援について、ご紹介しますね。

経営者の方に「会社のお悩み事は何かありますか?」とお聞きすると、ほとんどの企業から「人材の採用に困っています」や「組織構築をどのようにしていこうか悩んでいます」など、“人”に関する悩みを耳にします。人事や採用というのは、多くの企業が課題を感じていることであり、私たちも
力を入れてお手伝いしている分野です。

その人材支援の取り組みの一つがDEEPTECH DIVE(ディープテック・ダイブ)というもので、当社の投資先や支援先のスタートアップが無料で使っていただける登録型のマッチングプラットフォームです。

(引用:東大IPC【https://www.utokyo-ipc.co.jp/dive/】)

ー「DEEPTECH DIVE」ではどのようなことができるのか、その特徴を教えて頂けますか?
「DEEPTECH DIVE」というプラットフォームは、その名の通り「ディープテックに飛び込んでみよう」というメッセージを込めて立ち上げました。

支援先の企業が企業会員として登録し、個人の方は誰でも登録できるようになっています。プラットフォームの中で、登録している企業と個人が相互にやり取りを行うことができます。大学周辺のクローズドな交流型コミュニティとして、独自のコミュニティを形成しています。

特徴としては、フルタイムや転職の募集だけでなく、副業や学生インターン、バックオフィスも含めた幅広い職種の多様な働き方を提供している点です。

ー多様な方と出会うことができる貴重な相互交流の場になっているのですね!では、採用支援の他に、東大の子会社ならではの人材に関する支援にはどのようなものがあるのでしょうか?
採用支援と同様に、大学周辺のエコシステムの発展のために、私たちは研究者の方々のシーズの事業化のための支援にも力を入れています。

例えば、大学の先生や研究者がご自身の研究成果を活用した事業化を目指すときに、「経営を担う方がいればぜひ事業化を進めてほしい」というご相談をいただくことがあります。一方で、私たちのもとには、「起業をしたいけどその基となる技術シーズがない」という起業家の方からご相談をいただくこともあります。
そこで私たちの方では、双方のニーズがフィットするときに両者をお繋ぎし、事業計画をブラッシュアップしたり、対外的なプレゼン資料を作ったり、マーケット調査をしたり、事業化に向けた準備活動を進めていただけるようなマッチング支援を行っています。ただし、もし仮に双方のニーズが合って上手くマッチング出来たとしても、ベンチャーとして事業を立ち上げるまでに至るケースはごく僅かです。長い時間と労力がかかる道のりを、可能な限り伴走してご支援していくことも非常に大切な支援だと考えています。

ー研究成果を事業化するための人材の「ハブ」のような役割を果たされているんですね。では、そのほかに取り組まれていることはありますか?
そうですね。その他に独自の取り組みとしては、「東大IPCキャリアスクール」というものがあります。

(提供:東大IPC 東大IPCキャリアスクール)

東大IPCキャリアスクールは、スタートアップのバックオフィス業務で1日目から必要となる各種ITツールの使い方や基礎知識を学べる実践講座です。講師を務めるのは実際に当社の投資先・支援先企業を支援してくれている外部アドバイザーの方々なので、内容はかなり実践的なものになっていると思います。スクールに参加した後、希望する方はバックオフィス人材の採用ニーズがあるスタートアップとのミートアップにも参加ができ、もしそこで働きたい・採用したいという出会いがあれば、その後、実際に採用選考に進んでいただくことができます。

1回のミートアップでおおよそ20名ぐらいの参加者と、10〜15社ぐらいの企業に集まっていただきます。これまで2回開催し、70%以上の参加者が実際にスタートアップへ就業決定されているんです。

また、キャリアスクールの参加者同士がスタートアップに就業してから「同期」のような繋がりを持てることもこの取り組みの良いところなんです。「今マーケティングでこういう困り事があるんだけど、どうされていますか?」「採用ツールは何を使ってますか?」など、気軽にナレッジシェアや相談などができるコミュニティに、自然となってくれています。もちろん仕事の話だけでなく、仕事と家事を両立させるためのTipsや育児の相談などもお話されていて、和気あいあいとした雰囲気ですよ。

ー再就職やキャリアのステップアップを望む方々を支援している取り組みでもありますね。学生に向けたインターン情報の紹介などもされているのでしょうか?
実は、学生の方から「スタートアップでインターンしたいけど探し方がわからない」というお問い合わせをよくいただきます。

スタートアップ特化の人材紹介会社やデータベースもありますが、ほとんどが中途採用を対象にされているので、考えてみるとスタートアップのインターン情報がまとまっているところって限られているんですよね。日本では、インターンといえばまだまだ就活のためのインターンというイメージが強い中、お金を稼ぐためのアルバイトでもなく、“企業の中で社会ニーズに触れながら働く”という経験をしたい大学生の方も増加しているように感じます。もちろん具体的なニーズがある場合には個別にご紹介をしていますが、スタートアップでインターンしてみようと思うこと自体がもっと自然になるように、DEEPTECH DIVEの中でインターン募集情報を掲載し、またオンラインイベントを開催して情報発信をすることにも注力しています。

ー学生インターンから転職のキャリア支援まで、幅広くサポートされているんですね。そんな中で、小澤さんご自身はどのような想いを持って日々支援に関わってらっしゃいますか?
どれが一番と決めがたいですが、大きく三つ意義があると思っています。

まず、投資会社としては投資先の成長のために「人材」は大変重要な要素です。成長促進のために、採用支援や人を繋ぐ支援は大きな意味があり、思いを懸けているところです。

また、研究者シーズを事業化するためには、研究の力だけではなく会社経営や資金調達など、スタートアップとして生き抜くための力も必要です。そういった力をもつ人同士をお繋ぎすることはもちろんのこと、元々起業に興味がない方でも「何かやってみようかな」と思ってもらうような働きかけも重要なことだと考えています。

最後に、当社の取り組みを通じて、スタートアップでのキャリアについて知ってもらうきっかけになれたらいいなと思っています。「スタートアップで働きたいんだけど出会い方がわからない」と話していた方が私たちの様々な取り組みをきっかけとして一歩踏み出すことができたときに、とてもやりがいを感じることができます。

投資会社という側面からすると、そんな時間や手間のかかることをやって何の儲けになるのだと思われてしまうようなことでも、スタートアップ界隈の人材流動のために時間を割くことも大事にしたいと日々感じています。

ー担当領域である人材支援のみに留まらず、スタートアップという業界への熱い想いを持って取り組まれているのですね!小澤さん自身や人材支援における、今後の目標などがあれば教えてください。
東大IPCは国立大学の子会社であると同時に官民ファンドでもあるので、投資によるファイナンシャルリターンだけが成果の評価ではないと認識しています。

東大IPCという存在があることで、これまで進みにくかった事業や研究の事業化に対して「人材」の面で成長支援ができ、またそれが積み重なって他の地方や大学にも広がり、さらに長期的に続けていけるようになると、スタートアップ界隈の人材流動活性化や研究シーズの事業化に大きく寄与できると考えています。そのような観点で、引き続き、私たちにしかできない支援をやっていきたいと思うところですね!

ー東大IPCの存在や影響が、日本のスタートアップをさらに活性化させることに繋がるかもしれませんね!一方で、課題を感じることはありますか?
スタートアップに興味を持って踏み込む人がまだまだ少ない点ですね。私自身も新卒では大企業に就職しましたし、きっかけがなければこの業界に来なかったかもしれないという原体験を持っています。だからこそ、副業だったり徐々に参画してもらうようにしたり、スタートアップ側が柔軟に受け入れる体制を作っていくことが重要です。「スタートアップで働く」ことを選択肢の一つとして広めていければと思っています。

ーなるほど。たしかに、新卒や転職で大きくキャリアが変わる時にスタートアップ業界に足を踏み入れるのは、まだまだ難しいと考える人も多いですね。最後に、今後取り組みたいことがあれば教えてください。
DEEPTECH DIVEにシーズマッチングの機能を実装しようと考えています。現在、起業志望の方にも多くご登録いただいているので、その方が「起業前にちょっと検討してみたい・詳しく話を聞きたい」と思ったときにコンタクトができる間口になりたいと思っています。つまり、企業の人材採用支援だけでなく、新しい会社を作る前後のフェーズへの支援により一層と注力していこうとしているということですね。

また、グローバルな取り組みも増やしていきたいですね。日本から世界へ、世界から日本へ、世界から世界へ、色々な方向での交流が考えられると思います。私たちだからこそ出来る、また求められる支援を、これからも取り組んでいきたいと思います!

ー日本のスタートアップ活性化、そこに人のグローバル化が加わるときっと大きなイノベーションになるでしょうね!東大IPCの数多くある成長支援の中でも、今回は特に「人材支援」にフォーカスして話をお聞きしました。小澤さん、ありがとうございました!

[会社概要]
【会社名】東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)
【URL】https://www.utokyo-ipc.co.jp/
【設立年月】2016 年1 月
【代表者】代表取締役社長 植田浩輔
【所在地】東京都文京区本郷 7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ261


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