【Startup Weekend 浜松】日本初のテーマ・モビリティにかけるスズキ、オーガナイザーそれぞれの想いとは
▲写真左から、熊瀧さん、若月さん、神谷さん、平岡さん
日本初のテーマ・モビリティにかけるスズキ、オーガナイザーそれぞれの想いとは
2020年3月27日(金)から29日(日)にかけて、The Garage for startupsにて 第9回Startup Weekend 浜松MOBILITYが開催されます。
Startup Weekend 浜松(スタートアップウィークエンド浜松、以下:SWH)とは、週末を利用して誰でも参加できるスタートアップ体験イベントStartup Weekend(以下:SW)の浜松地域コミュニティです。
浜松地域でのSWは2016年に初開催され、今回で9回目を迎えることになりました。SWHは、様々な変革とチャレンジを行う中で今回、初の試みとして『モビリティ』というテーマを設定しました。浜松地域にとって非常に重要かつ意義深いテーマです。
今回は、スズキ株式会社(以下、スズキ)がスポンサーに初参加。スズキより経営企画室の熊瀧さん、神谷さんを。そしてオーガナイザーを務める静岡大学の平岡さん、若月さんを迎え、SWHや『モビリティ』というテーマにかける想いを語っていただきました。
熊瀧潤也さん
スズキ株式会社 経営企画室コネクテッドセンター
自動車業界のCASEのコネクテッド領域の開発や、データサイエンス、サービス開発、事業創出など幅広く活動中。開発のため見聞を深める中でSWHと出会い、参画を決意。
神谷洋三さん
スズキ株式会社 経営企画室経営戦略部
100年に1度の大変革と言われる世界の自動車業界の動向や課題を長期的に捉え、自社の強みを経営戦略へと落とし込み、様々な計画実行に従事。現在は経営戦略立案のほか、社内の生産性向上やスタートアップ活用など幅広く活動中。
平岡琢也さん
静岡大学 情報学部3年生
当時リードオーガナイザーだった若月さんに誘われSWHに参画。現在は就職活動中で自分の将来を見つめつつ、SWH成功に向けてアクティブに行動中。幼少期より乗り物が大好き。
若月祐樹さん
静岡大学 情報学部3年生
研究室にて、ICT技術発達の負の側面を解決する方法を探求中。SWHには第5回から参画、SWH08ではリードオーガナイザーを経験。学生にSWを普及させるべく、日々奮闘中。
課題解決ではなく課題発見の重要性
――SWHへの参加経緯を教えてください。
若月さん:大学2年生の春に、教科書的なことだけではなく、もっと自分の視野を広げるような経験がしたいと考え、第5回SWHに参加しました。
そこで、数学や物理など、目的があらかじめ設定された課題を論理的に解決することはできても、自分で目的を設定する力がないことを痛感したんです。
私は、スタートアップとは新たに課題を発見して、その課題解決を実現することだと考えています。自分で課題を発見できる人間になるためにSWHへの参加を続けてきました。
現在は、自分一人で課題発見について考えることには限界があるので、他の大学生とも一緒に考えていけたらと思い、オーガナイザーとして大学生に向けてPR活動を頑張っています!
神谷さん:弊社も課題を明確化することができれば、解決する力とリソースは持っている自負があります。しかし多様化し複雑化した変化の激しい現代では、課題を発見し適切に定義する力が非常に重要になってきていますが、大きな声ではっきりとこれが課題だと言える人はまだまだ少ないのが現状です。
ソリューションを持っているだけでは適切な課題解決は成しえません。自身で課題感を持つことが重要で、SWHはそういったマインドの醸成にぴったりだと感じました。
100年に1度の大変革、移動を再定義する時代へ
――SWHではこれまで、テーマ設定をしていなかったと伺っています。今回初めてテーマ設定に踏み切り、そして『モビリティ』に決定した。そこにはどういったお考えがあったのでしょうか。
平岡さん:今回テーマ設定を行い、モビリティに決定した理由は2つあります。
第一に、地域にとって課題解決が必要なテーマへのチャレンジということです。これまで浜松地域の経済を支えてきた自動車業界、輸送関連機器業界は現在100年に1度の大変革と言われています。意識の移動体験を実現するVR業界が大きく発展したり、これまでソフトウェアを売ってきた企業がプレーヤーとして移動体験のアップデートに挑んでいたりと、時代は、人々にとって移動という概念を取り巻く環境やその意味自体が目まぐるしく変化していく時代の真っただ中にあります。浜松で、移動体験というキーワードで今後のチャレンジやイノベーションが生まれるようなSWとしたいと考えています。
次に、SWHの活性化です。この浜松地域のみならず遠方からも次世代モビリティについて考えていらっしゃる方々にご参加いただくことで、SWHからの起業、新規事業立ち上げ、またスポンサー企業様とのアライアンス等を促し、本気で次世代モビリティの今後の在り方について議論し、SWHとして課題解決に向けた一歩を踏み出すことを期待しています。
個人的にも乗り物が大好きなので、MaaSや空飛ぶクルマに代表される移動革命によって人にとってより便利な移動って何だろう、移動体験がどういう風に変化するんだろうといったことを考えていきたいです。
神谷さん:今回、SWHと弊社が同じ方向を向くことができました。タイミングもよかったと思います。というのも、自動車業界全般の課題として、EVや自動運転、安全性能の向上に伴い車両の原価は高騰する中、これまでと同じ自動車では、自動車を所有する価値は低下していきます原価は上がっているのに、販売価格はそれほど上げられない、そういったときに移動の価値を再定義し、より深掘りしていく必要が出てきています。
四輪や二輪といった製品のくくりだけではなく、それこそスマートシティや、移動体験など本当に幅広いくくりで考えなければならない。
しかし、自社だけではアイディアが凝り固まってしまうので、外の人の新しい視野を参考にしたい、そういった機運が社内で高まっている中で、浜松地域の発展を目指して熱量持って活動されているSWHとタイミングよくマッチしたのではないかと思います。
熊瀧さん: 神谷さんが述べたように、現在、移動の意義を再定義する時代が来ています。弊社も移動を生業にしていますが、今後その意味の幅をもっと広げていく必要があると考えています。
移動には必ずその先の目的があります。目的のための手段として、これからの移動体験とはどうあるべきなのか、これを深く突き詰めていかなければならない。これは人々の移動を支える弊社の重要な使命です。
神谷さん:学生オーガナイザーの皆さんは、モビリティという単語をどの様に考えていますか?
若月さん:目的達成のための移動という手段、または移動すべきと考える対象が、実際に移動するしないに関わらず、移動したという感覚を体験すること、という大きな枠で捉えています。
しかし、まだまだモビリティ=車という固定観念がぬぐい切れていないことも事実です。
今回のイベントは、モビリティ業界に従事されている方のみならず、様々なバックグラウンドの方々にご参加いただける予定です。プレイベントでは「モビリティってどういう意味?そもそも何のために移動をするのだろう?」といった疑問について全員で考え、モビリティというテーマに対する広い視点からの共通認識を作っていく必要があるかなと感じています。
神谷さん:なぜ4世紀末に民族大移動は起こったのか、みたいなところから移動の価値とは何か、考えても良いかもですね笑。
移動するということは、そこに何か価値があったから人は移動をしてきた。これからの時代で人は何のために、どのように移動をしていくのか、そもそも移動するのは人なのか、物事が場所を移動するということはどういうことなのか、幅広く多角的にモビリティというテーマを議論できればなと考えています。
第一回プレイベント情報
第一回 「次世代モビリティの課題共有やIT技術を活用した展望を学ぶ」
講師:スズキ株式会社 四輪電子システム開発部長 倉知 伸成さん
:スズキ株式会社 経営企画室 コネクテッドセンター本社担当 部長 熊瀧 潤也さん
費用:無料
日時:2020年2月21日(金)18時〜20時
場所:The Garage for Startups
イベントページ: https://www.facebook.com/events/502777043709474/
デザイン思考で極端でユニークなアイディアを
――オーガナイザーとして今回のイベントの目標を教えてください。
平岡さん:乗り物好きとしては、これからの時代、移動を楽しめるような機会が減ってきてしまう懸念がありつつ、でも一方で利便性の向上や、人にとっての移動という概念の価値を考え直すことも大事だと思っています。どちらか一方に偏ってしまう社会も悲しいと思います。ですから、両極端なアイディアがどっちも出てくるような多様なイベントにしたいです。
熊瀧さん:これは車両に限った一例なのですが、実は、ハッカソンなどをやると、四輪車をテーマにするとまじめなものが出てくるが、二輪車の方だと面白いものが出てきたりするんです。確かに、両極端なアイディアが出てきてくれると面白いですね。
神谷さん:極端でないものは、きっとこの世界のどこかに既に同じものがある、ということをよく言われます。
起業家の中にはアイディアの新規性を測るときに、大資本が参入してきた時に淘汰されないかどうか、単純に規模の問題ではないか、ということを問いかける人もいます。
むしろその人に大資本を投資することに価値がある、そんなユニークな発想力を引き出せると良いですね。
平岡さん:実は以前、熊瀧さんに大学でデザイン思考についての特別講義をしてくださったことがありました。
誰か一人のインサイトに深く寄り添って、その一人に確実に刺さる極端なプロダクトを開発できれば、実はそのプロダクトはもっとたくさんの人に刺さるということを学びました。
ですので、デザイン思考的なアプローチを積極的に奨励していきたいです。
熊瀧さん:私たちの講義で学生の皆さんに何か得るものがあれば大変嬉しいです。
確かに、100人の内1人の誰かに確実に刺さるものは、全世界で見れば7000万人以上の人に喜ばれることになります。
だから、初めからたくさんの人に喜ばれるものを作ろうとするのではなくて、“この人に”という具体的なペルソナのためにプロダクトを生み出すという発想が大切だと思います。
起業家マインドの復活がモビリティ大変革の鍵を握る
――スポンサーとして今回のイベントに期待することを教えてください。
神谷さん:前向きな起業家精神のある人とより深く接したいです。ここでのアイディアが成果に繋がれば万々歳ですが、まずは我々も含めて、チャレンジを肯定できるコミュニティを作ること、こんなことやっていいんだ、と思える場づくりをしていきたいと思います。
熊瀧さん:実は前々から、こういったイベントをやってみたかったんです。「やってみたい」を、実現できる世の中になってきた、これは本当に素晴らしいことだと思っています。
昔は、それって儲かるの?何の意味があるの?といった疑念が先行して、挑戦しづらい環境がありました。
しかし、今はチャレンジできる環境があります。その機会を多くの社員に全力で楽しんでもらって、全力で活かしてほしいと思います。その中で異業種の方との交流が生まれ、今回だけではなく次の機会に繋がって、チャレンジマインドがスズキの次の世代に続いていく…今回のSWHMが社内で大きな起爆剤となってくれれば、本当にうれしいです。
若月さん: SWも誰もがチャレンジできる環境を作ることを最も大切な価値観としています。新しいことに取り組む人を否定せず、どんなチャレンジにも可能性があることを互いに認め合える。そんな誰もが起業家マインドを否定されずに持つことができるコミュニティを目指しています。
神谷さん:そういう意味では、スズキには起業家マインドがありました。誰かが自由に生み出し、提案して、肯定し合って、それが世に出る、そういった士気があったんです。
しかし、求められる水準が高まる中で、時代とともにチャレンジする精神が委縮していきました。もう一度、かつてのスタートアップ時代の起業家マインドを復活させること、これこそが弊社のみならず、モビリティの街「浜松」が100年に1度の大変革を乗り切るために必要なことだと思っています。
――最後にイベントに参加される方へメッセージをお願いします!
平岡さん:一歩踏み出してチャレンジをしに来てください!
若月さん:きっと何にでもチャレンジできるマインドセットが得られる素晴らしい機会になると思います!
神谷さん:弊社は、お母さんの家業を助けたいという目の前の課題から創業しました。目の前の人の課題を解決することが、意外と世界の課題を解決することになるかもしれません。身近な課題も大切にしてほしいなと思います。
熊瀧さん:挑戦を楽しんでほしいです!弊社はかつて、強い風が吹く日も釣りに行きたいという理由で原動機付自転車を作りだしました(笑)。良い意味でリラックスして、一緒により豊かな社会を目指していけたらと思います。
――皆様本日は貴重なお時間ありがとうございました!
SWHモビリティでは今、様々な企業や人々が一丸となり大きなうねりが生まれようとしています。チャレンジにチャレンジしたい方、浜松の産業課題を発見し解決したい方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
イベント詳細↓
(取材・執筆:EXPACT株式会社 井上裕太郎 編集:EXPACT株式会社 坂井あゆみ)