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【まきチャレ2023開催記念インタビュー | 株式会社LX DESIGN】学校教育に新たな関係人口を増やし子どもたちに生きた教科書を

牧之原市が主催するビジネスコンテスト「第2回牧之原市チャレンジビジネスコンテスト(以下、まきチャレ2023)」の表彰式が10月に開催されました。

まきチャレ2023は、牧之原市の「産業資源」と「観光資源」を活用して、自らの事業を地域と共に発展させるビジネスプランを全世界のスタートアップ企業から募集し、評価するビジネスコンテストです。第2回開催である今回は、EXPACT代表の髙地が審査員として参加しました。

本記事では、まきチャレ2023で市長特別賞を受賞された、株式会社LX DESIGNの代表取締役社長の金谷智さん、2022年にLX DESIGNの新卒で入社し、現在は、教員でもある山口創さんに教育現場が抱えている問題やまきチャレ参加のきっかけ、今後の展望についてお聞きしました。

まきチャレ2023について詳しくはこちら!

今回のインタビュー先である株式会社LX DESIGNは、「すべての人が自分らしい人生をデザインできる世界を」をビジョンに、教育特化型 外部人材のマッチングサービス「複業先生」を提供しています。代表である金谷さんは先生一家で育ち、自身も先生として働きながら、学校教育の現場はアナログで、先生たちが社会から孤立化している現状を目の当たりにしました。既存の教員だけでは手が回りづらかった領域において、民間人材の知見やネットワークを手軽に活用することで、児童・生徒が社会とつながりながら学びを深める環境を創り、「社会に開かれた教育課程」を推進しています。

LX DESIGN公式HP・SNSは以下の通りです。
・HP:https://lxdesign.me/
・note:https://note.com/lxdesign/
・facebook:https://www.facebook.com/LXDESIGN37/
・X(旧Twitter):https://twitter.com/Lxdesign321

ー本日はよろしくお願いいたします。今回は、代表の金谷さんと山口さんにご参加いただきました。それぞれ、ご自身のバックグラウンドも含めて自己紹介をお願いします。

山口)2022年に新卒で入社しました。現在は神奈川の私立中高一貫校で先生もしており、中学一年生の担任と保健体育、バスケ部の顧問もしています。金谷とは大学のゼミで紹介されたのがきっかけでした。教員志望でしたが就活もしていたため、面白そうな方だなと思ってFacebookで探してDMを送りました。初めは全く返事が返ってこなかったのですが、粘り強くメッセージを送り続けていたら金谷から課題を出されたり、近い方とお会いすることが出来て、最終的にLX DESIGNで働くことになりました。

金谷)大学を卒業してから品川区で小学校の先生をしていて、28歳で起業し現在6年目になります。両親も祖父も学校の先生をしている家系で育ったのですが、自分が先生になった時と父や祖父が先生をしていた時の学校の働く環境はほとんど変わっていませんでした。過去50年変化が無かったということは、先の50年も大きく変わることはないだろうな、と考えるようになりました。

技術がこんなにも発達しているのに学校は時代に置いて行かれている状況で、その中にいる先生たちは社会から孤立してしまっているんです。学校の先生という職業が無くなってしまうのではないかという不安もあり、当時大学生だった私の中には①日本一の学校の先生になる②学校の環境を変える③全く違う業界に行く の3つの選択肢がありました。幼少期から先生を見て育ったこともあり初めは日本一の先生を目指しましたが、一人ひとりに最適な機会とインパクトを提供するためにはほど遠い現状を目の当たりにし起業しました。大学生の時から周りに教員志望の人がいなかったため、学外の起業家の方たちに会いに行ったり、山口のような現場の先生達と一緒に、これからの学校の先生の在り方について考えています。

ーありがとうございます。山口さんは学校の先生をしながらLX DESIGNでも働いているとのことですが、どのように両立されているのでしょうか?大変ではないですか?

山口)私が働いている学校は全員担任制で動かしていて、4クラスある中学一年生に担任が8人いる仕組みとなっています。担任一人の業務量を複数人でシェアしているので、負担が大きいと感じたことはないですね。1クラス1人の担任といった固定担任制だと1人で30人以上の生徒をみないといけないため、担任としての経営手腕も問われてしまいます。現場では、”学級経営”ともいわれており、私のような若手教員だと、経験不足もあり教員個人で抱え込んでしまう可能性が高くなります。全員担任制にすることで、一人ひとりの教員にも、それぞれ得意分野があり、それをチームで生かし合うことによって、生徒にとって最適な支援ができるのだと考えています。

働き方も完全週休2日制です。休みの日は木曜日と日曜日となっている他、空きコマの時間にLX DESIGNで働いています。

ー今の時代は、担任の先生が複数人いるんですね。ひと昔前だと担任は1人というイメージでしたが、そういった変化も多いのでしょうか?

山口)私が働いている学校は先進的な方だと思います。他の学校の先生ともお話をする機会がありますが、学校の中で、目の前の業務や子どもたちとの対話に時間が注がれている分、外と繋がりたいが、繋がる手段や余裕がないと困っている声を聞きます。このため、昔と全く変わらない、産業として時が止まってしまっているのだと思います。また、学校は1年周期で同じことを繰り返すので、変化を起こす必要があるのか?という意見もあります。新しいものを取り入れると適応までに時間がかかりますし、子どもたちのためにやっていることが教員の負担になっているのも事実です。

金谷)先生を取り巻く環境には①教員の負担増・疲弊・人手不足②雇用形態・労働環境の硬直化③時代遅れな現場の非効率さ の3つの課題があると思っています。更に、これらの課題が相互に影響を与えており、この絡まりが問題を複雑にしています。起業当時は、問題を言語化することも難しかったです。

ー毎年同じことをするのだから変える必要はないという意見にも納得できますが、これが環境を硬直させてしまっているのですね。お話を聞くだけでも先生たちが複雑な状況に置かれていることが分かります。

金谷)少し起業家の視点になりますが、複雑な問題は言語化が大変ですし、言語化できても解決できないかもしれないという不安もあります。このような泥臭い部分はVC(ベンチャーキャピタル)からも評価されづらいです。複雑さを抱えている現場のオペレーションがどう変わるか、が重要です。新しい変化を起こすという意味では、学校教育分野への参入障壁は高いと思います。

引用:複業先生HP(https://fukugyo-sensei.net/)

ー問題解決の方法と解決後の姿に焦点を向けられやすいですよね。ちょうどビジネスサイドの話題が出てきたので、まきチャレに話題を移ろうと思います。まず、エントリーされたきっかけをお聞きしたいです。

山口)私の父が牧之原市出身で、私にとっても牧之原は第二の地元でした。これを金谷も知っていたので、任せていただけたのだと思います。また、8月に静岡県西部の市長の方々にピッチをする機会があり、今回のまきチャレはリトライの場でもありました。

金谷)LX DESIGNでは、社員1人1人のルーツを大切にしています。これを理解することで、何のために尽くしたいのか、モチベーションが理解できます。その地域の文化を理解していて、地域のために尽くしたい人が出るべきだと思っているので、今回は山口にお願いしました。ビジネスも最後は「想いの強さ」だと思います。

ー個人のルーツを理解することはとても大事だと感じます。個人の意思の尊重度合いや懸ける思いの強さは表情や声にも現れますよね。そんな、山口さんの思いが市長特別賞の受賞にも繋がったのだと思います。改めて、どのような点が評価されたとお考えですか?

山口)LX DESIGNが提供するサービス「複業先生」はまきチャレに登壇されている企業や牧之原地域で働いている方々も、子どもたちの生きた教科書となることができます。現場の思いを直接届けることができることで、地域の就業率などにも繋がっていく点が評価されたのではないかと思います。牧之原市は学校の再編計画を行っているので、タイミングも良かったです。まきチャレの発起人であり主催者の出繩さんにも、何度もアイディアの壁打ちをさせていただきました。

金谷)まきチャレは、事業や今回のピッチに懸ける想いを理解する器のある地域であり大会だったと思います。事業のストーリーなども重視されており、審査員に現場を知っている人が揃っていました。このような舞台で、「我々の思い」や「事業に対する熱さ」を発信できたのではないかと思います。

髙地)私は実際に審査員として参加させていただきましたが、事業の内容だけでなく、山口さんご自身の言葉で発信されていたところに引き込まれました。市長からの評価も高かったです。教員の働き方を広げることが子どもの視野を広げることに繋がる、という点が印象的でした。

ー実際に先生をされている山口さんがお話しされることで、課題の重大さに説得力が増しますよね。時間がかかっても変化が必要な状況であることが分かります。

金谷)その人の可能性を考える時には、時空をゆがめて考えること、つまり、短期的に見るのではなく長期的な目線で考えることが必要です。地域と教育の関係性は深く、子どもの可能性を広げることは、お金では測ることのできない価値があると思います。今我々は先生の働き方改革を進めていますが、これを通じて子どもたちの可能性を広げることが最終目標です。

また、教育に正解はないという意見がありますが、私は信じていません。可視化が出来ていないだけだと思います。「あの時、先生にこういう言葉をかけられたからこうしてみよう」「あの時こう言われたから、今こうしているんだな」の経験は多くの人にあると思うのですが、これをデータとして集めることで公式化でき、子どもたちに還元できると考えています。

ー幼い頃に言われた何気ない一言を長い間覚えていることって多い気がします。発言と行動をパターン化できれば、教科書を作ることも出来ますよね。最後に、ご自身、そして事業をこれからどのようにしていきたいか、山口さんと金谷さんそれぞれの意見をお聞きしたいです。

山口)私は現役教師ということもあり、教員が今よりも適切な評価を受けられる社会になったらと思います。ニュースなどではあまり良い話を聞きませんが、学校の先生はプロフェッショナルです。例えば保健室の先生は、少し顔を見ただけで体調が悪いことをすぐに把握できます。クリエイティビティが求められる仕事だからこそ、様々な先生がいることを子どもたちにも、社会にも知ってほしいです。

ー確かに、教員の履歴が可視化された時に結果を出す先生が評価されることは必要ですよね。

金谷)私自身、学校現場での経験があったのでこの事業を始めました。地方では特に過疎化が進んでいますが、どの過疎地域にも学校はあり、全国には3万5千もの学校があります。数の多さという資産を有効に活用していきたいと考えています。このような地域を巻き込んだ繋がりの場を通じて、ご縁の分かち合いを広げていきたいです。

ー私もお世話になってきた先生たちが複雑な環境に置かれていること、また、変化のために動いている方がいることを知ることが出来た貴重な機会でした。日本中の子どもが、生きた教科書に触れられる世界を見てみたいです。今回のインタビューはここまでとなります。お忙しい中、ありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?毎年同じことをするという学校の特徴が環境の硬直化に繋がっている、という視点が新鮮に感じました。また、新しい変化や子どもたちのための行動が教員の負担になっているという矛盾も、子どもたちへの想いが先生たちの首を絞める要因になるという理論では説明できない複雑さを抱えているように見えます。今までは先生たちの専門性に委ねて解決していた部分をパターン化することによって、既存の先生たちの業務が効率化されるだけでなく、新任の先生の負担も軽減されるのではと思いました。「小学校の時、あの先生がこんなことを言っていた」「あの授業の活動が楽しかった」などの経験は大人になっても意外と覚えていることが多いように感じます。インタビューを通じて、子どもたちが社会と関わりながら自身の学びを深めることが出来る環境が広く、身近になればと強く感じました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

[会社概要]
【会社名】株式会社LX DESIGN
【URL】https://lxdesign.me/
【設立年月】2018年7月
【代表者】代表取締役社長:金谷智
【所在地】東京都千代田区麹町1-4-4 2F

取材:EXPACT 髙地・坂井・森田・金野
執筆:金野







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