初心者のためのM&A 〜定義や手法の種類、成功事例まで分かりやすく解説〜
皆様は「M&A」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?
この記事ではこれから起業される方や既に起業されている方に向けて、「M&Aの定義、スキーム(手法)の種類、M&Aの成功事例」に関して解説していきます。よろしければ是非ご覧ください!
M&A(エムアンドエー)とは?
M&A(エムアンドエー)とはMergers(合併)とAcquisitions(買収)の頭文字を取った用語で、その文字通り複数の企業が一つの企業になったり(合併)、企業が他の企業を買うことを意味します(買収)。合併や買収することにより企業、または企業の一部の事業の経営権を取得することを意味します。狭義でのM&Aでは合併と買収を意味しますが、広義では提携までをM&Aと捉える考え方もあります。この記事では狭義のM&Aを説明します。
企業がM&Aを行う理由や目的は様々です。代表的な理由として事業の拡大から、企業経営または運営の効率向上、企業経営の生存のため、など様々な理由があります。
2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナウイルスの影響で一時的に減少しているものの、M&Aの件数は近年増加の一途を辿っています。近年では企業の成長戦略の一つとしてM&Aを取る企業もあります。
出典:2020年最新のM&A件数、コロナ禍以降の推移を振り返る
M&A(エムアンドエー)の手法
買収
1)株式取得
株式取得は相手企業の株式を取得することによって経営権を取得することを意味します。売り手側の企業は自社の株式を売却し、その対価として現金を受け取ることができます。また、買い手側の企業は取得した株式の比率に応じて売り手側の企業の経営権を取得することができます。
①株式譲渡
株式譲渡は売り手側の企業の株式を買い手側の企業へ譲渡することによって企業の経営権を継承する手法です。譲渡側(売り手)企業と譲受側の企業の取引条件が合意した場合、株式譲渡契約書を締結することで譲渡側の企業は対価を受け取り、譲受側の企業は株式を取得することで取引が完了します。株主が変わるだけで、権利や義務の関係などそれ以外に変化は生じないのが特徴です。
②株式交換
株式交換は完全子会社化を測る場合によく用いられる手法です。譲渡側企業の全ての株式を譲渡側であり親会社となる企業が取得し、その対価として譲受側(親会社)の企業の発行済み株式を交付する手法のことを言います。取引後も譲渡側の企業は自社の社名や企業文化の継続が可能であり、また保有している親会社の株式を通じて親会社の運営への参画も可能です。
③株式移転
株式移転は、完全親会社となる新設された企業が既存の複数の企業から発行済み株式を取得し、その対価として新設された企業の発行済み株式を交付するM&A手法を意味します。既存の企業が親会社となる株式交換とは違い、新しく設立された企業が親会社となり、新設企業の株式を交付された複数の既存企業が子会社となります。
④第三者割当増資
第三者割当増資は新しく発行する株式を既存の株主ではない特定の第三者に有償で引き受けてもらうM&A手法のことを言います。買収というよりも、経営の再建や資金調達、第三者との関係性強化を図りたい場合に行われる手法です。
2)会社分割
会社分割は、一つ、または全ての事業を企業から切り離し別企業に移転するM&A手法を意味します。
①吸収分割
吸収分割とは、既存の企業から既存の企業へ事業の一部、または全部を承継し、対価として株式や金銭を支払うM&Aの手法です。事業譲渡と異なる点は、事業の権利や義務について個別に移転手続きを行わず引き継ぐ点です。
②新設分割
新設分割は既存の企業の事業の一部または全てを新設した企業へ承継するM&A手法を意味します。受け継ぐ企業が既存の企業なのか新設した企業なのかが新設分割と吸収分割の違いです。
3)事業譲渡
事業譲渡とは企業の事業の一部または全部を他の企業に買収し、その対価として現金を支払うM&Aの手法です。譲渡の対象となるのは営業権や資産、負債、従業員の雇用などがありますが、各種契約を一つ一つ指定して買収する点が特徴的な手法です。譲渡側企業は後継者不足や不要な事業の切り離しなどを解決でき、譲受側の企業は営業権、ノウハウ、従業員の確保などを目的に行います。
合併
二つの企業が一つになる合併の手法として新設合併と吸収合併の二つの手法があります。合併では合併後も存続する企業を存続会社とよびます。また、合併後消滅する企業を消滅会社と呼びます。
1)吸収合併
吸収合併は合併される前の企業の事業資産を合併後も存続する企業に継承する手法を意味します。この場合、事業資産を移行した企業が消滅企業となり、移行された企業が存続企業となります。
2)新設合併
新設合併は二つ以上の既存の企業の事業資産を新設した企業に移行することを意味します。新設された企業が存続企業となり、事業資産を移行する前の既存の企業は解散するため消滅会社となります。結果として新設された企業のみが存続企業として残ります。
M&Aの成功事例
1)株式会社セブン&アイ・ホールディングス × Speedway LLC
企業HP)セブン&アイ・ホールディングス :https://www.7andi.com/
Speedway LLC:https://www.speedway.com/
2020年8月に日本のコンビニ業界では最大手のセブン&アイ・ホールディングスがアメリカで約4,000店舗を展開するガソリンスタンド併設型コンビニのSpeedwayの買収を発表しました。セブン&アイ・ホールディングスは北米のコンビニ事業の拡大を目的に、Speedwayの発行済み株式を取得し、取得価額210億ドル(約2兆3,000億円) で 買収を完了しました。
これによって、米セブンイレブンの営業利益は約2倍になります。また約3,900店舗のSpeedwayを取り込むことによって合計約1万4,000店舗となり、他の競合社に差をつけることができます。
2)日本郵政 × 楽天グループ株式会社
企業HP) 日本郵政:https://www.japanpost.jp/
楽天グループ株式会社:https://corp.rakuten.co.jp/
2021年3月に郵便事業を日本全国的に展開している日本郵政と、楽天市場、ラクマなどEコマースをはじめとした様々なサービスを提供している楽天グループは物流、DX、金融、モバイル等の連携強化を目的にM&Aを実施しました。両者のM&Aは第三者割当増資を実施し、日本郵政が楽天グループの増資を引き受ける形として出資額は約1,499億円でした。
これによって、楽天グループは全国の郵便局を楽天モバイルの契約窓口や基地局の整備、拡大に利用することができます。また日本郵便は楽天市場の宅配物を優先的に引き受けることで「ゆうパック」の業務を拡大することができます。
終わりに
最後までご覧いただきありがとうございました。今回は、M&Aの定義や手法の種類、具体的な成功事例などをご紹介いたしました。
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