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【まきチャレ2023記念インタビュー | Staple】シンガポール発 画期的な文書電子化サービス、Stapleとは

牧之原市チャレンジビジネスコンテスト(以下、まきチャレ2023)は、牧之原市(静岡県)の「産業資源」と「観光資源」を活用して、自らの事業を地域と共に発展させるビジネスプランを全世界のスタートアップ企業から募集し、評価するビジネスコンテストです。第2回開催である今回は、EXPACT代表の髙地が審査員として参加しました。

この度は、まきチャレ2023のファイナリストの一人であるStaple社CEO、ベン・スタイン氏に彼らの提供するサービスおよびまきチャレ2023に対する印象、そしてこれからの日本市場における展望についてお聞きしました。

ー本日はお時間をとっていただきありがとうございます。

いえいえ、こちらこそ。

ーまずStapleさんが展開されているサービスについて教えてください。

Stapleは文書のレイアウト・言語に関係なく、様々な種類の文書からデータの読み取り、抽出・解釈・そして照合を行うことができます。我々のサービスはPDF・Excelファイル・画像・写真・XMLファイル・Word文書など様々な文書整理の自動化に悩む企業様に提供できると考えています。

他社のサービスでは読み取るデータが構造化・整理されていないとプロセスを自動化できません。実際に企業が扱っているデータのほとんどは構造化されていないため、サービスを利用することもできないのですが、我々のサービスではそれらのデータを自動化可能な構造化フォーマットに変換して企業様の自動化プロセス促進への貢献を目指しています。

また、我々はデータの構造化のみならずデータの照合なども行います。例えば、お客様の物流・管理・出荷に関する文書など、一貫性が求められるデータ・文書群に異常や矛盾などが無いかを確認することでクライアントの企業様が正しいデータを受け取っているのかどうかもチェックします。

ーそのようにデータを構造化するプロセスは、時間・人的資源の負担を下げて他の分野にそれらの資源を投入したい企業様にとって非常に役立ちそうですね。ドキュメントの自動化以外に、Stapleを他の企業と差別化しているポイントは何でしょうか?

そうですね、まず私たちのサービスは多言語で対応しているという事があげられますね。私たちはアジア市場を念頭にサービスを開発しました。なので他の企業のサービスが従来のOCR(光学的文字認識)や英語で学習させられた従来の機械学習を用いる一方、現在190言語に対応しており、真にグローバルな、様々な国のクライアント様を支援させていただく事が可能です。競合他社の多くは、このように幅広い言語や法域によって異なる文書をサポートするサービスは提供しておりません。
 
また、GDPと人口という観点から見るとアジアは地球上でも最大の地域ですが様々な点、特にビジネス分野に関しては分断されていると考えております。基本的に、国によってビジネスのやり方は少しずつ異なっております。我々では北米向け・日本向け・インド向けというように国によって変えることなく、全ての国に統一されたサービスを提供しています。。

我々のサービスは190言語にわたる多言語対応のみならず、請求書・証明書・コンプライアンス文書などあらゆる種類の文書に対応しているためクライアント様のCFO・CTO・IT部門責任者の方から重宝されております。Stapleは異なる言語・異なる文書タイプにもスムーズに対応するたった一つのツールなのです。

ーStaple様のサービスはどのような企業を対象にされているのでしょうか?

基本的に、書類データなどを多用するデータ集約型の組織であれば全て対象になります。現在、程度の差こそあれ世界中のほとんどの企業がこのような問題を抱えていると思います。大企業から中小企業に至るまで、毎日大量の文書やデータを処理しなければならない企業様への支援を特に重視しております。また、我々は多言語&グローバル対応のサービスを提供している関係から多国籍企業にも注力しております。

我々が対応している業種としては金融サービスや保険を提供する業種など、契約や請求書類において高度な水準の文書を取り扱う業種になります。また、消費財・食品・飲料・工業・製造業などの商品の取引量が多い組織も、物流や在庫を管理する書類が大量に使用されるので、こちらも我々が対象としている業種の一つになります。

ーこれまで顧客の方からどのような意見をいただいたのか、そしてStapleのサービスがどのように顧客の文書管理に影響を及ぼしたのかについて教えてください

そうですね、クライアント様の企業において文書管理に携わるスタッフの数を減らすことに貢献できた例もあります。だからと言ってそれが企業様の従業員の縮小につながるかといえばそうではなく、むしろより価値のある・顧客志向の業務にそれらの人材を活用することにつながっています。すなわち、我々のサービスは企業内の人的資源を有効活用することにつながっているのです。

正直、私たちがサービスの提供を開始した時、すぐに受け入れられるとは予想しておりませんでした。実は企業様にとっても、書類データの整理はやむをえず従業員に行ってもらっているという側面があり、本音としてはもっと他の業務に携わって欲しいというのがありました。我々Stapleのサービスは、そのようなルーチンワークから従業員の方々を解放し真に価値を生み出す仕事に集中させることが可能なので、結果的に企業様からそういった点を評価していただいていると思います。ポジティブに受け入れていただいたことにいい意味で驚きもありました。

ー世界各国の様々な企業様からのStapleの提供するサービスに対する好意的な反応はありますでしょうか?また、お客様に喜ばれている最新の機能とは?

アジア全域11か国で事業を展開している顧客がいますが、カンボジア、タイ、台湾など、扱っているすべての言語に対応できるサービスを見つけることがこれまではできませんでした。1〜2か国に対応サービスを利用し、その他の国への対応は手作業で行っていたのですが、Stapleを使い、さまざまなニーズに対応することができたといいます。その中で非常に魅力的だったのは、すべての業務を1つのデータ・ソースに統合でき、1つのツールで経営陣へのレポート・報告が可能になったことです。

またお客様からの評判が良い最新の機能としては、ドキュメントやデータリポジトリと会話できるようになったことです。ユーザーの皆様は、英語だけでなく190の言語にわたって、当社のサービスを使ってドキュメント・リポジトリに問い合わせることができます。これは、より迅速な意思決定を促進するための分析にも役立ちます。

ーStapleを立ち上げたきっかけはどうなのでしょうか?

そうですね、私はもともと大手コンサル企業で約9年間様々なチームに所属、また別のグローバルに事業を展開する企業で最高財務責任者として働いてきました。その時に、オフショアリングと言う形で日々のルーティンワークをより安価な地域に外部委託しようとしていました。ただ、現地語と英語に堪能な方は比較的見つけやすかったのですが、韓国語・日本語・スペイン語・ルーマニア語など様々な言語がかかわってくるお仕事をお受けするようになると、どうしてもそのような言語に堪能な方は見つけるのが難しく、コストカットに繋がらないと言う問題に直面しました。つまり、オフショアリングを通じてコストを抑えると言う本来の目的の達成が難しくなったのです。

また、ドキュメントの処理のみならずデータの照合、様々なデータ・ソースからのデータの整合性のチェックも重要にも関わらず既存のツールの多くにこの機能が欠けていると言うのも問題でした。

ーなぜシンガポールをStapleの本拠地に選ばれたのでしょうか?

シンガポールを本社に選んだのは、私と共同創業者の二人ともが法人設立時にシンガポールを拠点にしていたのと、最初の投資家の方の所在地だったと言うのが理由ですね。

またシンガポールは港湾都市として地理的にもかなり中心部に位置しているのと、公用語の英語に加えて3つの言語が広く話されていると言う環境が、私たちのビジネスにおける仮説を検証し強みを実証する上で適した場所だと判断しました。

〜牧之原市ビジネスチャレンジコンテスト(まきチャレ)におけるStaple〜

ーそもそも、なぜまきチャレに参加しようと決意されたのでしょうか?

理由としては、日本市場における私たちの戦略に沿ったものと言うのが大きいです。当時、私たちのサービスが対象としている市場に適合する企業様、例えば静岡銀行・スズキなどが多いことに気づき私たちのサービスに興味を持っていただけるのではと思いました。また、日本政府からの助成金などの機会も考慮した結果このチャンスを追求するべきだと判断し、まずは最初の一歩としてまきチャレに参加させていただきました。

さらに私たちはいずれ日本市場に本格的に進出していくことも視野に入れています。その一環で市場でテストを行い、潜在的な顧客や組織からどのような関心が私たちのサービスに寄せられているのかを調査することも非常に有益だと思います。

ーまきチャレの他のファイナリストの中には、地方の課題解決に力を入れているという方もいらっしゃいましたが、今後、日本の地方でビジネスを展開していく予定はありますか?

現時点では関心はあります。私たちが牧之原市に興味を持った理由の一つに農業の要素があります。なぜかと言いますと現物や製品の物流に伴って発生する大量の書類があり、静岡のお茶産業は非常に規模が大きいので、我々のサービスが入り込む余地があるのではと考えました。
 
東京や大阪など、日本の他の市場も視野に入れていますが、まだ特定の場所にオフィスを構えることは決めていません。私たちは日本のいくつかの組織とパートナーシップを結んでおり、そのひとつがSAPです。また、システムやソフトウェア開発を扱う会社といった日本のパートナーとも仕事を始めています。彼らは静岡県と東京都どちらもカバーしており、そのため私たちは牧之原市やその他の日本の大都市などの両方に関心を抱いています。

〜Stapleの将来の展望〜

ーStapleの将来を見据えた質問に移りましょう。最近、世界的なマクロ経済・地政学的リスクや投資家心理の冷え込みにより、スタートアップのエコシステムには大きな逆風が吹いています。そのような市場状況の中で、Stapleは資金調達計画、事業運営モデル、成長戦略という3つの要素に対するアプローチを変えられたりなどされたのでしょうか?

資金調達計画という点では私たちは幸運にも資金調達ができましたが、今スタートアップ企業にとってかなり悲惨な状況であることは明らかです。特にベンチャー企業のようなハイリスクな投資には誰も積極的に投資していませんが、私たちは幸運にも昨年末に資金を確保することができました。

ではなぜそれができたのか?理由としては厳しい経済状況にも関わらず私たちのサービスが非常に成長性があり、汎用的で柔軟なものということを示すことができたからです。このようなことを何らかの形で示すことができれば、非常に落ち込んだ市場や非常に長引く投資市場でも目立つことが容易になると思います。
  
私たちはこの資金を、より多くの顧客を獲得・新しい市場開拓・日本など既存の市場を拡大・既存の機能強化などの成長戦略の実行に投資していく心積りです。

ービジネス・オペレーティング・モデルとして、利益を生み出すことに重点を置かれるのかそれともStapleの成長一般に重点を置かれるのでしょうか?

昨年は初めて黒字の四半期を迎えましたが、投資を受けてからしばらくの間は少なくとも1年間は成長を優先します。これはビジネスモデルや経済性とはあまり関係がなく、むしろ成長のために使うつもりで投資を受けているという事実なのです。しかし、昨年黒字を達成できたことは、私たちのモデルが黒字を出せることを示しています。ただ、長期的に適切な結果を出せるように、さまざまな要素を調整する必要があります。より効率的に物事を進めるべきか、マーケティングや他の活動への支出を減らすべきか、これから検討していきます。
今回の4半期で我々のビジネスは収益性があるということを実証できているので、これから1年成長にフォーカスしても1年半程度でまた昨年の四半期のような収益状況に戻れると確信しております。

ー貴社のアジア市場における継続的な成功及び日本市場参入戦略が成功することを願っています。Stapleが提供するソリューションは、現代の企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の礎となるでしょう。

[会社概要]
【会社名】Staple AI Pte Ltd
【URL】https://staple.io/
【設立年月】2018年10月30日
【代表者】Ben Stein
【住所】38 Maxwell Road, #03-04, Air View Building, Singapore 069116

取材:EXPACT Pramod Sharma・原
執筆:Pramod Sharma・Yahyo Kholmonov


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